平凡な私の獣騎士団もふもふライフ
チラリと隣を見やれば、同じく正座姿勢の副団長コーマックの姿があった。『理想の上司ナンバー2』の彼は、もう諦めきった捨て犬みたいだった。

さっきからずっと視線が合わない。その様子からは、自分が来たのは最悪なタイミングだったのとも分かって、余計にリズを不安にさせた。

その時、ジェドの鋭い眼差しが不意にこちらに向いた。

「おい、お前」

「ひぃ!?」

腰を上げた彼が、美麗な顔に険しい表情を浮かべて覗き込んでくる。形のいい目元に、濃い紺色の髪がさらりとかかっているのが見えた。

「このまま記憶を飛ばされるのと、絶対に喋れないようにして遠い地へ飛ばされるのと、どっちがいい?」

ひぇぇぇえッ、なんてSな解決案方法!

リズは、すぐには声も出なかった。けれど必死にならなければならない事情もあった。もう色々と衝撃的でパニックの中、思わずこう言った。

「あ、あの――ど、どどどうかクビだけは勘弁してください」

ビクビク怯えながらも、涙目であわあわと伝えた。

何せようやく見付けた就職先だ。たった二週間でクビになったと知ったら、列車を乗り継いで十日もかかる故郷で、今度こそ両親と村人達が卒倒しそうだ。

「ぜ、絶対に誰かに言ったりしませんから、お願いです」

リズは大きな赤紫色(グレープガーネット)の目を、怯えながらも真っ直ぐ向けて頼み込んだ。

するとジェドが、顰め面でじっと見つめてきた。宝石みたい青い目を次第に近づけてこられて、リズは戸惑いがちに首を竦めながら返事を待った。
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