平凡な私の獣騎士団もふもふライフ
「『協力体制』、『引き渡し』、『意見交換で打ち合わせ』……なんのことかしら」

『多分、任務関係』

「カルロって、ほんと難しい言葉もよく知っているのねぇ」

リズは見上げて、感心の吐息をこぼしてしまう。座ったカルロが相変わらずの無愛想さで、小馬鹿にしているのか威張っているのかも分からない「ふんっ」と鼻を鳴らした。

獣騎士団の任務には関わっていないので、難しいことはよく分からない。けれど地面に掘られた字からは、穏やかではないことは伝わってくる。

「密猟団体の件……そういえば白獣って、狙う人が多いのよね」

先日、ジェドが横になって休んだ際『密猟』と口にしていたのを思い出す。

白獣は、この地域にしか生息していない魔力保有生物だ。その存在はとても貴重で、獣騎士団は彼らの保護にもあたっている部隊団なのだとも聞いた。

「その狙っている密猟団が、複数入ってきてしまっているということ……?」

リズはここに来るまで、珍しい魔力持ち動物の戦闘獣、というくらいしか知らなかった。だから人間に狩られるだなんて、思ってもいなくて。

『子らは、弱い』

するとカルロが、ガリガリと新たに字を刻んだ。

『自らでは、守る術がない』

「――うん、そうよね。お世話をしてよく分かったわ」

とても素直で、少し力はあるけどリズが抱えて走れるくらいの大きさだ。

そう思い返して微笑んだリズは、不意に嫌な予感がした。
< 120 / 182 >

この作品をシェア

pagetop