平凡な私の獣騎士団もふもふライフ
その時、リズは、上空に自分達以外にもいることに気付いた。三頭の相棒獣と三人の獣騎士がいて、そのうちの一人は副団長のコーマックだった。

「リズさん! 無事だったんですね! 良かったです」

視線を返してきたコーマックが、そう大きな声で言いながらぶんぶん手を振ってくる。他の二人の獣騎士達も、平気そうに手を振ってくる。

それを見たリズは、高いところで片手離し……と、ふらりとした。

「良くない良くないんですよ高いんです!」

リズは、思わず一呼吸で言い切った。

普通にしている彼らが信じられない。そんな目で見つめ返していると、ようやく察してくれたようにコーマックが「あ」という顔をした。

「そういえば、リズさんは初騎乗でしたね……」

「つか、考えてみりゃ、獣騎士以外が騎乗するなんてねーしなぁ」

別の騎士が言って、もう一人の騎士も「確かに」と今更のように相槌を打つ。けれど彼らは揃って、まぁでもありかな、となんとなく察した表情だった。

「団長って領主でもあるし、……その相手となると、良かったりするんですかね副団長?」

「僕に訊かないでください……自覚前に、誤解で殺されかけた心的ダメージの余韻がまだ残っているんです……」

「団長の場合、これからが大変だと思うんだけどなぁ。まず、素直に想いを伝えることからハードルがありそうじゃないっすか?」

え、とコーマックが部下達を見る。部下達も、自分達より団長と付き合いの長い彼が、忙しさもあって思い至っていないのが驚きで「え」と見つめ返した。

会話が途切れ、三人の間にしばし微妙な沈黙が漂う。

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