平凡な私の獣騎士団もふもふライフ
少し距離も離れているし、風の音も強くて話し声がうまく聞き取れない。

「何か喋っているようではあるのだけれど、何かしら……」

つい、リズは理想の優しい上司像であるコーマックを見つめてしまっていた。

と、不意に、腹に回されている腕に力が入るのを感じた。耳元に吐息を感じるくらい、もっとジェドの方へ引き寄せられる。

ぎゅっと密着されたリズは、「へ?」とすぐそこにあるジェドの顔を見上げた。その美貌には、どこか意地悪げな笑みが浮かんでいる。

「えっと、団長様……? どうかしたんですか?」

「よそを見ているとは、余裕だなリズ?」

「あ、いえ、余裕は全くないのですが、どうして私はもっとぎゅっとされているのでしょうか……?」

「これから少し揺れる(・・・・・)からな。だからお前は、しっかり幼獣達を抱えておけ」

ニヤリとして彼が見下ろしてくる。

こういう顔をするのを見て、ろくなことがあった試しがない。なんだか機嫌が良さそうな彼を前に、リズは反射的に警戒してピキリと固まってしまった。

と、カルロが優雅に動き出した。相棒達が目を戻すと、コーマック達が揃って目を向けてきて手を振ってこう言ってきた。

「リズさん、お疲れさまでした!」

「もう立派な獣騎士団の一員っすね!」

「ほんとお疲れ様です! また後で会いましょうね~」

そんな部下達の言葉に、ジェドが片手を上げてフッと応える。
< 173 / 182 >

この作品をシェア

pagetop