平凡な私の獣騎士団もふもふライフ
コーマックやトナー達獣騎士の声もしたような、と思って振り返ったリズは、直後に警戒心マックスでピキリと固まってしまった。

そこには、これまで見たこともないほど大きな白獣がいた。

恐らくは普段、見掛けている相棒獣よりも一回りは大きいだろう。それは野生であるのか、恐ろしい爪で地面を抉りながら騎士達の所で暴れていて――。

その白獣が不意に、ギラリと獣の目をこちらに向けた。

「え。嘘」

バッチリ目が合ってしまって、思わず引き攣った声が出た。

直後、その野生と思わしき凶暴そうな獣が、方向転換するのが見えた。爆走してくる方向は、真っ直ぐこちらである。

そのまま向かってこられたリズは、慌ててスカートをひるがえして走った。

「なんなのこれ一体何がどうなってるの!?」

肩越しに見れば、一回り分のサイズがデカい獣が猛進してくる。やはり凶暴な爪が芝生を容赦なく抉っていて、リズは「ひぇぇ」と細い声をこぼした。

その向こうに小さく見える獣騎士達が、「くそっ、自分から来やがった癖になんて暴れ獣なんだ!」「恐らく暴走した!」「止めろ!」と騒いでいる声が聞こえてくる。

来たばかりって……やっぱり野生なの?

そのうえで凶暴化中だとしたら、と考えてリズはさーっと血の気が引いた。

そもそも国で最大の戦闘獣である白獣は、獣騎士以外には懐かない。

それを思い出してゾッとした。ここで出会った他の大人の白獣は、相棒騎士がそばにいたから平気だったのかもしれない。
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