好色歯科医が初めて真剣な恋をしました

何故 真美に 両親のことを 話したんだろう。

黙って 車を運転しながら 駿平は 考えていた。


誰にも 言ったことがない 心の傷。

駿平は それを 自分の弱みだと 思っているから。


みんなは 駿平を 幸せな 成功者だと 思っている。

裕福な家庭で 生まれ育ち。

歯科医師になるための 十分な 教育を受けて。


そして 独立した今は クリニックの経営にも 成功して。

美しく 優秀な スタッフを 雇い入れ。


仕事も私生活も 充実していると

駿平を 知る人は 思っている。


そう思われていることに 

駿平は 満足していたはずなのに。


「わぁ。先生。海が見えてきた。」

真美の歓声に ハッとして 

駿平は 真美を見る。


あどけない笑顔を 駿平に向ける真美。

さっき チラッと見せた 暗い瞳は

すっかり 消えていたけれど。


『俺は どうしてこんなに 真美が 気になるんだ。』

真美の笑顔だけで 俊平も 笑顔になっていた。





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