マシュマロベイビー



思わず身体が動いた。




逃したくなくて



萌にキスしてた。



かわいくて



せつなくて



嬉しくて



もっと欲しくて



萌を




俺のものにしたくて



トモダチなんかじゃなくて



萌の彼氏になりたくて




萌に触れられるたったひとりに



なりたくて



だけど…






萌が泣くから




焦りすぎて




萌を傷つけたのかって



びびる自分と




このままおれのスキ優先して



萌に気持ちぶつけたいって




わがままに暴れる胸の内。



萌のナミダに



現実とおれの



隔たりを思い知らされて



俺まで泣きそうだったよ。




あーなんで、こんな好きなんだ。



どう動いたらいいんだ。



って、頭ん中萌のことばっかなのに。











「アラタくん♡



指めっちゃ、長くない?



見せて?」



アラタの物思いをやぶる声。



プアゾンの香水の匂いがフワっと



薫る。




綺麗に塗られたマニュキュアの指が



遠慮なしにアラタの指に触れた。



「いや。普通っすよ」



その近い距離感から遠ざかろうと




アラタは軽くいなしながら言った。



…なにこれ。



は?




なにこれ?




ここは



よくアラタたちが溜まっている喫茶店。



喫茶店って呼ぶのがふさわしいのか。




ともだちの親が




税金対策で開いているカフェで




たまにしか来ない店長と



ほぼ顔見知りしか来ない店なので



実質、アラタたちが好きに使っている。




駅前の大通りから一本裏道に



入った場所にあって、



何かの店舗をい抜きしたのか



四角形の店内。



細長いカウンターと



大人数が座れるような大きなソファが



コの字型に、1箇所置かれ



その抜けた茶色の皮張りのソファと




レンガ調の壁が




アメカジ風の雰囲気を強調している。




その奥には段差がついていて、



一段下がったその場所には



ビリヤード台が数台。



フロアの奥まった一角をごちゃっと



占めていてる。


その店内に



アラタたち若業生。




それと大学生らしい、お姉さまがた。



「なにこれ?」




あっ、向こうで奏が口に出してる。




遊び仲間で



ここのアルバイト店員のタケルが言う。




「なにって…、合コン?」



聞いてねぇー。



タケルが耳元で言う。




「めっちゃ、レベル高くね?



今度おごれよ」



いや。頼んでねぇし。




望んでねえし。





おねえさんが何か言ってるけど



今はそのバッチリ塗られた口もとも



ダダ漏れのフェロモンも全然



萌えなくて



ひたすらうっとうしい。




そんな気分じゃねえっていうか。




それどころじゃねぇんだよ。



萌の、ことで頭いっぱいなんだっての



アラタはため息ついて



まわりを見渡す




『興味ねー、うぜー』って



態度を隠しもしない奏以外は



盛り上がっている。



この雰囲気は壊せねえよなぁ…。



マジカノ作ろうと必死なヤツもいるし。




めんどくさいから、適当に




あしらって、時間過ぎんの待って




抜けるか。



そんなアラタの気遣いとは



無縁な奏は態度に出まくり。




うざそうなの隠す気ねぇもんな。




ある意味うらやましいわ。




ガタンっ。



その空気読まないオトコ



奏が立ち上がる。



そんな奏に



お姉さんたちの背後に立った



ワタルたちが




両手を合わせて




お願いっ!!!



そんなポーズを必死に送る。




奏の眉毛が



グーって寄せられて上がり…




下がった。




ガタンっ。




奏が力が抜けたように




また、イスに座った。



はい。



奏も観念しました。


< 99 / 127 >

この作品をシェア

pagetop