幼女総長と不良たち
「凌久、もう伊東さんに用は済んだよね?
もう少ししたら、帰さないと。」
「どこに?」
「どこって、住んでる場所にだよ。」
「・・・・」
「バイト行くついでに、送ってくよ、伊東さん。」
いつの間にか私たちの隣に来ていたハン君が覗き込むように私に話し掛けた。
そしてさりげなく柔らかい手つきで私の髪を触る。
凌久に抱かれているせいかもうハン君に怖さは感じない。
「・・・俺も行く。」
「は・・・?」
「俺も送ってく。」
「・・・・なに、それ。」
凌久の言葉にハン君の顔が歪む。
でも声のトーンは変わらず平坦で、代わりにハン君が拳を固く握るのが見えた。
「凌久・・・・伊東さんに、今日会いたいって言ったほんとの理由は、一体何なの。」
「・・・・」
「まさか、凌久も、
伊東さんに入れ込んでたりするの?」
「お前と一緒にすんな。」
凌久がハン君にデコピンをすると、再び元居たソファへと戻り私を向かい合わせにして膝に乗せた。
「お前は誰かと一緒に暮らしてんのか?」
「ううん。一人。」
「・・・そうか。」
・・・凌久がわざわざ敵である私を呼んだというのは、"決闘宣言"ではなく何か別の用事があったということなのだろうか?
何か言いたげな表情で凌久が私を見つめる。
キッチンからカチャカチャとお皿が小さくぶつかる音が部屋に響いた。
蘭と斗和が2人で仲良くお皿を洗っている。