諦めた心

怜にとって
親父がどんだけ崇拝されているか
知っていた。

そんな怜が、親父を失って
気持ちの行き場を失くしてしまい、
一華に八つ当たりしたとわかる

だが、一華の心だけにとどまらず
身体まで傷つけた事は
俺の中で、どうしても許せなかった。

ずっと一緒に過ごした
友人だから
尚更、許せなかったんだ。

怜は、何度も頭を下げて
一華に詫びていた。

「詫びて許される事ではない」
と、言いながら······

一華は、困った顔をしていたが····
「なぁ、日和。
今は、まだ無理かもしれない。

お前は、一華が苦しんできた時を
ずっと側で見て一緒に苦しんできたの
だから。

お前が、自分自身をどれだけ
責め続けてきたのかもわかる。

だがな、達彦さんは
お前と大賀が仲違いをしていることを
望まないと思うぞ。

だから、いつの日か
また、大賀と話してやれ。
長く一緒にいたんだろ?

こんなひねくれた大賀を理解して
一緒にいるのはお前位だと思うぞ。

それにな、秘密にしていたが
学長を使って、
日本からも一華からも引き離したのは
俺だ。
罰を与えなかっただけ親切だろ。

だから、俺も意地悪したしな。
大賀は、アメリカに行くのも
大変だったみたいだぞ。

大賀には、両親がいないからな。
年老いたおばあ様が大賀を
育てていたからな。
老いたおばあ様を置いて行くのに
ホームを探してお願いしたりして
ゆっくるする暇なく日本を出たんだ。」
と、言うと
大賀も、日和も一華も
びっくりした顔を哲也に向けた。

すると、大賀が
「ばあちゃんの所に度々
会いに来てくれる男性とは?」
「あ~あ、俺かな。
俺には、もう両親いないからな」
と、言うと
大賀は、項垂れながら
「あり··ありがとう···ござい····ます··」
と、言ったから
「てっちゃん、そんな事したの?」
「だってな、頭にきたんだよ。
可愛い可愛い、一華に酷い事した
こいつに。」
と、大きな身体で一華に話す
哲也さんに俺は笑いがでた。

やっぱり、この人は凄い
と、改めて思った。

一華は、ブツブツ言って
哲也さんは、言い訳をしていたが··
「怜、まだ、直ぐには友達に
って言うのは、無理だけど。
親父の墓にも帰国したら
来てやってくれ。
おばあ様の事は、俺も哲也さんと
一緒に行かせてもらう。」
と、言うと
怜は、涙を流しながら
「ありがとう。ありがとう。」
と、言った。

そんな、俺と怜を
一華と哲也さんは、嬉しそうに
見ていた。
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