お見合い夫婦のかりそめ婚姻遊戯~敏腕弁護士は愛しい妻を離さない~
「大丈夫? ちゃんとごはん食べてたの?」
体を離して、拓海の顔をまじまじと覗き込む。出張に出る前より、少し頬の肉が薄くなったような気がする。
「飯はうまかったんだけど、あいつらここぞとばかりにこき使いやがってさ。交渉に何時間もかけるわ、蒸し暑い中あちこち連れ回されるわ、ほんとくたびれた」
普段から鍛えている拓海でも、さすがに向こうの気候は堪えたのだろう。加えて、初めてのアジア出張で、よけいに気を遣ったのかもしれない。
「拓海って、そんなに口が悪かったけ?」
「……悪かったな。夏美に会って気が抜けたんだよ」
くすくす笑いながら言うと、拓海はほんの少しバツの悪そうな顔をした。
「ごはんもできてるんだけど、その前に少しでもいいからこはると遊んであげて」
「わかった。でもその前に、これ」
拓海は荷物の中から紙袋を取り出すと、私に手渡した。中を覗くと、台湾名物のお菓子の箱がたくさん入っている。
「うそ、こんなに?」
「全部味見して買ったから、味は確かだよ。ちゃんと夏美の舌に合うと思う。好きなだけ食べて」
そんなに消耗するほど忙しかったのに、全部味見して私のために選んでくれたの?