お見合い夫婦のかりそめ婚姻遊戯~敏腕弁護士は愛しい妻を離さない~

「どうした夏美? やっぱりコスメとかの方がよかった? でも俺そういうのあんまりわからなくて……うわっ!?」

 嬉しさのあまり、気がついたら拓海に飛びついていた。

「ううん、嬉しい。一つひとつ私を思い浮かべながら選んでくれたのが、一番嬉しい」

 拓海の優しさが、寂しかった心に沁みる。拓海の心の中に、少しは私の居場所があるって思っていいのかな。それだけで、私の恋は十分報われた気がする。

「喜んでもらえてよかった。こはるにもお土産渡してくるな」

「うん、ごはん用意しておくね」

 こはるへのお土産は、おもちゃらしい。早速気に入って、夢中になって遊んでいる。

 拓海とこはるのそんなようすを見ながら、私は一つ決意を固めた。

 できることなら、このまま拓海のそばにいたいけれど、やっぱりこんな不自然な結婚をいつまでも続けるべきじゃない。

 拓海が私に契約結婚を申し出たのは、全部佐奈さんのため。佐奈さんの想いが叶った今、私が拓海にしてあげられることは、ただひとつ。拓海をこの結婚から解放してあげることなんじゃないのかな……。


 佐奈さんと湊人さんの結婚式が終わったら、拓海をもう自由にしてあげよう。

 たくさんの幸せをくれた拓海に私がしてあげられるただ一つのことは、きっとそれだけだから……。

 胸が痛くて仕方ないけれど、この二週間私なりに考えて、ようやくそう決断ができた。 


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