お見合い夫婦のかりそめ婚姻遊戯~敏腕弁護士は愛しい妻を離さない~
「祖父江さんと、なにかあったの?」
過去の回想に耽る私に、綾さんがさらりと訊いてくる。さすが綾さんだ、鋭い。
「私でいいなら話聞くわよ?」
「……長くなるかもしれませんよ」
「いいわよ、別に。おかわり頼むし」
ちょうど通りかかった店員さんに、綾さんがワインを一本追加で頼む。これは……聞く気満々だ。
「さあ、もう一度乾杯しましょ」
「……そうですね」
綾さんとワインでもう一度乾杯をして、私は拓海との過去を話し始めた。