お見合い夫婦のかりそめ婚姻遊戯~敏腕弁護士は愛しい妻を離さない~

豪華な料理が並んだテーブルを挟んで、拓海と向かい合う。


「せっかく用意してもらったんだし、食べよう」

「……そうだね」

 私みたいな普通のOLでは、一生に一度でもお目にかかれるかわからない享和園の昼懐石だ。拓海を前に若干気まずくはあるものの、食事は食事で美味しくいただくことに決める。


「再会を祝して乾杯でもする?」

「します」

 もちろんお酒もいただくことにする。


 拓海が仲居さんを呼び、食前酒を頼んでくれた。拓海は結構しっかり飲むつもりなのか、食事に合わせて冷酒も注文している。


「それじゃ、乾杯」

「乾杯!」

 こうなったらと開き直って、私は拓海とグラスを合わせた。


 食事をしながら、今さらながら互いの近況を報告した。

 拓海はアメリカから帰国してお父さんが経営している会社に入り、弁護士として一から修業をしているらしい。
 会社はお兄さんが継ぐ予定で、今は彼の右腕になるべく日々頑張っていると話してくれた。


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