好きなんだから仕方ない。
大広間に持ち込める分は兵士たちの労働を考慮して倉庫の半分。エイミア様の集めた食物はこれで全部。
勝ったと言うように長男が笑った。次男も形と量を見て最下位は免れたと少しほっとした表情を浮かべた。

「エイミア。これは一体どういう事?」

「あなた方は野菜を持ってこいとだけ仰いました。“新鮮な野菜”ではなく“野菜”とだけ。しかも自分の口から王族の名も語らず、お金も出さずに。どうせすぐ捨てるのですから国民に新鮮な野菜を回して何がいけないと言うのでしょう?それとも、形が不揃いで不格好であれば味の保証がないと?」

奥様は困惑しているようだった。王室での生活に慣れて過ぎて野菜の形を忘れたのか、そもそもこのような育ち方をしてしまう野菜がある事を知らなかったのか。本当に野菜なのか疑っているような表情をしていたのだ。
他の者の表情は疑っていたり笑っていたり。でも、エイミア様は想像と違った。落ち込んだり早く逃げ出したいと落ち着きがなかったりするかと思ったらなぜと疑問を持ちたくなるほど堂々としていた。
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