好きなんだから仕方ない。
警戒心もなく扉を開けてもらうとそこには次男が立っていた。何か忘れている約束でもあったかしら。

「兄上。どうなされたのですか?」

「隠れるんだ。こっちに来い」

「は?何?どういう事ですか」

「良いから来い!」

抵抗する私を軽々と持ち上げた次男はそのまま衣装箪笥の中に身を寄せた。私を奥の角に追いやり、守るように手を付いて密着されたけれど現状が分からない以上無理に責めて聞き出す事も出来なかった。
暫くすると、部屋の扉が開く音がした。騒がしい複数の男の声がする。聞き慣れない声。
兵士たちは、女中たちはどうしたの。クロエラは無事なの。どうしてクロエラの声が聞こえないの。
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