好きなんだから仕方ない。
ダメ。今は何も考えたくない。クロエラとの思い出が涙と一緒に流れてしまいそうで怖くて。泣きたくないのにどうして流れるの。
強くならなきゃ。誰の手を借りなくても生きていけるくらい強くなって仕えるという意味を無くさなきゃ。その時になってもまだ好きだったら思いを伝えよう。
大丈夫。その頃にはきっと諦められてるはず。住む世界が違ったんだって理解できているはず。
次の日から私は、力を付ける事だけに気を止めた。武器での戦い、素手での戦い。何であっても強く、まずは自分を守れるように鍛えた。クロエラが仕えていた意味を無くせば一人の人として向かい合える気がして。
魔力も徐々に解放していけるように皆が手伝ってくれた。守られているだけだった私から守っていく私になれるように。
それも、最後に立ち寄った町の宿屋の主人が“言葉が無くても思ってくれている人がいるという事を忘れないで”と言ってくれた事を覚えているからかもしれない。
どうして主人がそんな事を言ってくれたのかは分からない。でも、凄く頭に引っ掛かっていた。
< 70 / 260 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop