好きなんだから仕方ない。
女中は訊いていないのに自分の事を話し始めた。長男に恋をして城に仕え始め、実績で専属まで上り詰めた。そしてやっと、秘密ではあったけれど恋人のような関係になれた。なのに、長男はずっとエイミア様の事を気にかけていた。酷い事をしてしまわないよう、他の女と関係を持つ事で抑えていた。
どれだけそばにいても、近付いても。自分はエイミア様以上の存在にはなれないんだと諦め、ただただ要求に従っていた。

「何か、言いたい事がおありなら簡潔にお願い致します」

「伝えないのなら後悔、しないでくださいね。エイミア様は今、普通の女性に戻りました。・・・たまにはご自分の気持ちを尊重なさっても宜しいのではないかと」

女中は頭を下げ、奥様の所へと行った。普通の女性に戻ったから、王族にいた時より結婚してしまう確率が上がったと言いたかったのだろう。
王族は王族内でと考える者が多く、恋愛で結婚するという事が少ない。だから、例え結婚されても問題ないと思っていた。そもそも叶うわけがない恋だと思っていたから。
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