ヘタレな俺はウブなアラサー美女を落としたい
「はっ……吐きそっ……」
そう宣言した俺に対して、彼女はしれっと言ってのける。
「そう? いいよ。出して 」
いいわけあるかーい! と突っ込む余裕も、ない。
泥酔してこんなところに寝っ転がっている時点でアウトだとわかっているが、リバースだけはダメだろ。そんなのもう終わりじゃん。一生この人に合わせる顔ないじゃん……。
俺は気管から上がってきそうな諸々を喉奥へと押し留めながら、なんとか会話をする。
「いやっ……こんな軒先で、迷惑だしっ……」
「そうね。でも今はいいよ。ここ、私の店の前だし」
「えっ」
私の店?
その言葉が気になって、ここが何の店の前かを確かめようとしたが、頭が朦朧としているせいで遠くの景色がはっきりしなかった。ここにあった店はカフェだったか。それとも美容室? 高級クラブ? 彼女は夜の蝶なのか?
「出さないことには気持ち悪いの治まらないでしょ。吐き気は体の防衛本能だから我慢しないほうがいいよ。……店の中まで移動するのも難しそうだし。吐いても片付ければいいから、ほら。胃の中のもの全部出す気持ちで」
「いやいやっ……」