ヘタレな俺はウブなアラサー美女を落としたい
本気で吐けばいいと思っていそうな口振りに、俺は焦って泣きそうになる。優しい手のひらに背中を撫でられる。その間にも胃のムカムカや頭のグラグラは治まることを知らない。気持ち悪い。死にそう。助けてほしい。でも吐きたくない。
吐きたくないし……そもそも、俺は。
「吐けないっ……!」
「え?」
苦しくて、お姉さんの腕に掴まってなんとか上体を起こしたまま、情けなくそう叫んでいた。吐けない。吐きたくても俺は吐くことができない。仮に見栄とか男の沽券とか全部を無視したとしても、無理なのだ。俺にはできない。物理的に。
「吐けないって、どうして……」
「俺っ……吐いたことがなくて」
「ん?」
「どうやって吐けばいいのか、全然っ……」
「……ああ」
その人は腑に落ちたように相槌を打った。
――ああ死にたい。
泥酔して道端に転がってるところを介抱してもらって、吐き気で真っ青な顔を晒して、挙句の果てに〝吐き方がわからない〟なんて泣き言……。
ダサいの重ねがけ。嫌われ要素のトリプルパンチ。再起不能の三重苦。
もういっそ殺してほしい。