今夜、あなたに復讐します
「あんた、明日も泣かずに働きなさいよー」
玄関ロビーで元田利南子が言い、夏菜が、
「はいっ。
頑張りますっ」
と元気に答えていた。
いや、問題の洗礼をしているのは利南子のような気がするのだが……。
そう思いながら、指月は物陰から夏菜を窺っていた。
夏菜は初めてのオフィスでの仕事が楽しかったのか、満足げだ。
ちょっぴり飲み残しているあのペットボトルを手に、やり遂げた感を醸し出し、夕日に向かって歩いている。
……いや、お前、社長を殺しに来たんだろうが。
なにもやり遂げてない、と思いながら、指月は少し遅れて、夏菜を尾行する。
エレベーターで、夏菜は自分の耳を見て、
「あ、ギョーザ」
と呟いていた。
柔道やレスリングなどの格闘技をやり込んでいると、耳がつぶれてギョーザのようになってしまうことがあるのだ。
すぐに自分のギョーザ耳に気づいたようなので、本人か、周囲に誰か格闘技をやっている人間がいるのだろうとは思っていたが……。
「うん?」
指月は交差点の辺りを見回した。