心-ココロ-
「琴葉!だいじょ…」
涼くんの声で、現実に引き戻される。
茜部先輩が唇を離す。
そして、近付いてきた涼くんが、思い切り茜部先輩をビンタした。
「いった…」
「どういうつもりだ」
「胡桃のこと好きだって、伝えた」
涼くんは、見たことないくらい顔を歪めた。
「現に、胡桃だって俺のキス、拒んだか?」
「…」
「いやそれは、頭回ってなかっただけでっ…その…」
涼くんは黙り込んで、拳を握って震えている。
「涼くん、あのね」
「なに」
低い声だった。怯んでしまいそうだった。
「…っ」
「何となく気付いてたよ。俺から気持ちが離れていたことくらい」
「え?」
「琴葉から会いたいって言ってくれたことないし、茜部先輩と図書室の本買いに行った時だって、本買うだけじゃなかったでしょ。本買うだけだったら、あの日俺とも午後少し出かけられたんじゃないの?」
「違う…」
「茜部先輩と、浮気してた…?」
悲しげに涼くんが言ってくる。
「そうじゃない…」
「じゃあ何?納得できる理由ある?」