寂しい姫と不器用王子
「それはいいんだけど、付き合ってるわけではないんだ…」
「付き合ってくれなんて言われてないし」
「まあそうか」
「付き合うこともないし…」
聞こえるか否かくらいの小声で言った。
聞き間違いであってほしいと心から願った。
だとしたら俺といるのは惰性ってこと?同情ってこと?
怖くて聞けなかった。
そして週末が来る。
そわそわしてしまう。初めてのデート。姫莉にはデートじゃないと否定されたけど。
一緒に外に出て、隣を歩く。
近くで屋台をやっていて、浴衣姿のカップルなんかも散見される。
「屋台行く?」
「うん!」
たこ焼き、りんご飴、かき氷を買った。
喧騒から抜けて、ベンチに座る。
「ん、たこ焼き。はい、口開けて」
「あーん」
あっちぃ、とか言いながらハフハフして食べている。
あーんさせてくれたんだけどマジか。
「俺にもしてよ」
「えー。いいよ?」
さりげなく間接キス…。
「何あのカップル、可愛いんだけど!」
という、女性の声が聞こえてしまう。さすがに恥ずかしくなった。
あと、付き合うことないって言ったのに、あーんも間接キスもしてくれる姫莉は、何なんだろうと悲しくなる自分もいた。