寂しい姫と不器用王子


「それはいいんだけど、付き合ってるわけではないんだ…」

「付き合ってくれなんて言われてないし」

「まあそうか」

「付き合うこともないし…」


聞こえるか否かくらいの小声で言った。

聞き間違いであってほしいと心から願った。

だとしたら俺といるのは惰性ってこと?同情ってこと?

怖くて聞けなかった。


そして週末が来る。
そわそわしてしまう。初めてのデート。姫莉にはデートじゃないと否定されたけど。

一緒に外に出て、隣を歩く。

近くで屋台をやっていて、浴衣姿のカップルなんかも散見される。


「屋台行く?」

「うん!」


たこ焼き、りんご飴、かき氷を買った。

喧騒から抜けて、ベンチに座る。


「ん、たこ焼き。はい、口開けて」

「あーん」


あっちぃ、とか言いながらハフハフして食べている。
あーんさせてくれたんだけどマジか。


「俺にもしてよ」

「えー。いいよ?」


さりげなく間接キス…。


「何あのカップル、可愛いんだけど!」


という、女性の声が聞こえてしまう。さすがに恥ずかしくなった。

あと、付き合うことないって言ったのに、あーんも間接キスもしてくれる姫莉は、何なんだろうと悲しくなる自分もいた。


< 17 / 22 >

この作品をシェア

pagetop