居候同期とフクザツな恋事情


なにか話すわけでもなく、ずっと隣に立っているイオを気にしつつ、洗い物をどんどん片付ける。

全ての食器を乾燥用のラックに立てかけて、水道の水を止めたとき。


「メェちゃん。今日、ありがと」

イオが小さな声でぽつりとつぶやいた。


「え?」

イオの言っている意味がわからなくて、濡れた手を振りながらしばらくぽかんとする。


「ちょっと……、ていうか、だいぶ元気出た」

顔をあげたイオが、ちょっと泣きそうに笑うから、胸の奥がキュンとする。

あ、そっか。『ありがと』って、今日一緒にパンケーキ食べに行ったことのお礼だ。

元気、出たんだ。

イオの言葉が嬉しくて、その喜びがじわじわと胸に込み上げてくる。

だけど同時に、泣きそうに見えたイオの笑顔が気になった。

元気は出たって言ってたけど、永田さんのことを完全に吹っ切れたわけではないのかもしれない。

イオの気持ちを考えたら、少しだけ心がモヤモヤとした。


< 137 / 240 >

この作品をシェア

pagetop