居候同期とフクザツな恋事情


目を閉じて、少しだけイオのほうに顔を上げると、軽いリップ音がして額にキスが落ちてきた。


「おやすみ、メェちゃん」

やけに甘ったるい声で、イオがそれだけを私の耳元にささやく。

そのまま抱きしめる腕を解いたイオが、普通に私の隣に寝転がるから、なんだかとても拍子抜けした。


「お、やすみ……」

一応そう返したものの、何か違う……と思って、私はぱっと起き上がった。

突然起き上がった私を見て、イオが目を瞬かせる。


「どうしたの、メェちゃん」

呑気なイオの声に、私はひとりでモヤモヤとした。

どうしたの、って。どうしてイオは、人のベッドに潜り込んできておきながらこんなにもふつうなの────?

私はイオの言動ひとつひとつに、死ぬほどドキドキして、そわそわして。

それなのに、おでこにチューして「おやすみ」なんて。

それじゃ、全然物足りない!

最終的に至った自分の考えもどうかと思うけど。このままじゃ、イオのことが気になって余計に眠れる気がしない。


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