赤い毒は愛の証
雪は狂気的な笑みを浮かべる誉の腕から逃れようとするが、体にもう力はほとんど入らない。呼吸がだんだんできなくなっていく。

雪は誉の愛は今日のために作られたものだったのか、と涙をこぼした。結局自分は最後まで毒しか与えられてこなかった。甘い罠にかかった蝶は、最初から逃げることなどできない。

雪の視界がだんだん色を失っていく。誉は雪の頬を優しく撫で、「どんな表情でもやっぱり君は綺麗だね」と呟く。もう雪の体は毒に完全に侵されていた。

雪の目の前が暗闇に包まれそうになったその時、誉に優しくキスをされる。

「大丈夫。死体になっても君を愛しているから……」

赤く甘い毒によって、雪は最期の時を愛した人の腕の中で迎えた。





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