その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―
「それは、立場と状況が違ったから……」
「ふーん」
買い物袋を軽く揺すって隣を歩く広沢くんの顔は、ものすごく不服そうだった。
「昨日、れーこさんたちと店で別れたあと……」
しばらく黙り込んだ広沢くんが、足元に視線を落としてぼそりと話し始める。
「菅野さんとか女子社員が、すげー盛り上がってましたよ。『この頃碓氷さんの雰囲気が丸くなったのは、大森さんのせいじゃないか』って」
「え?」
「もしそうだとしたら、それは『俺のせいだ』って。そう言いたかったけど、大森さんと一緒にいたれーこさんのこと思い出したら、なんか自信なくなりました。俺はれーこさんとの噂の対象にもなり得ないのかなって。隣にいると思ってたれーこさんが、実は俺の妄想だったのかもって」
「そんなこと……」
「ついでに、れーこさんがプロジェクトチームへの参加を断った理由も、いろいろ勘ぐっちゃったりして」