その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―
「ごめんなさい。ちょっと、緊張してしまって……」
目を伏せてつぶやくと、広沢くんがきょとんとした顔をして数回瞬きをする。
「なんでれーこさんが緊張するんですか?朝から、っていうかほんと言うと昨日の夜から、めちゃくちゃ緊張してんのは俺のほうなのに」
「え?」
意味がよくわからなくて首を傾げると、広沢くんが照れ臭そうに笑いながら手のひらで口元を隠した。
「いや、どのタイミングで話すのがかっこつくかなーってずっと考えてて。きっと食事のあととかがいいんだと思うんですけど、このままだと料理どころじゃなくなりそうなんで、もう伝えちゃいますね」
「う、ん?」
「実は俺、2ヶ月後に本社への異動が決まりました」
少し身構えた私の目を真っ直ぐに見て、広沢くんが晴々とした顔でそう言った。
「うん、おめでとう」
笑顔で静かにそう返すと、広沢くんがほんの少し頬を膨らませて不服そうな顔をする。