その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―
広沢くんの熱い手に、顔を防御していた手があっさり退けられる。
横から私を覗き込む広沢くんの顔が、暗がりの中でも意地悪く笑っているのがわかった。
「早く、車!」
せめてもの抵抗で、にやけているその顔を睨むと、広沢くんが私の右手を繋いでそれを彼の膝の上にのせてきた。
「今から出します」
「待って。これ、危ない」
左手で私の手を握ったまま、広沢くんが右手だけのハンドル操作で車を出そうとする。
「だったら、顔隠さないでください」
広沢くんににっこりと微笑まれて、私は渋々まだ顔を覆ったままでいた左手をスカートの上におろした。
「れーこさん、ときどきスイッチ入りますよね」
私の手を離して両手でハンドルを握り直した広沢くんが、ちらっと横を向きながら揶揄うように笑う。
「家に着いたら、またさっきみたいに、れーこさんからしてくださいね」
「何を……」
「わかってるくせに」
「もう、しない」
「えー」
フロントガラスに映る私の顔に視線を向けながら、広沢くんが不服そうに唇を尖らせる。