その瞳に涙 ― 冷たい上司の甘い恋人 ―



「はい、大丈夫です」

「お願いします」

桐谷くんの初々しい姿が可愛くて、つい優しく笑みを返してしまう。


「確氷さん。俺が外出前にお願いしたこと、確認してくれました?」

桐谷くんを戻らせようとしたとき、デスクの前に陰が落ちた。

いつの間にかそこに広沢くんが立っていて、少し驚く。


「確認って何?あ、桐谷くん、終わったらまた教えてね」

何かを直接手渡された覚えはないし。メールに何か送られてきていたんだろうか。

パソコンを確認しながら、デスクに戻っていく桐谷くんに声をかける。

するとすかさず、広沢くんも桐谷くんに声をかけた。


「あ、桐谷。それ、俺がチェックできることなら言って」

「え、別にそんな必要ないけど」

怪訝な表情を浮かべる私に、広沢くんが有無を言わせない雰囲気で微笑みかけてくる。


「でも、確氷さんも忙しいでしょ。教育担当は俺なんで。桐谷、終わったら、まず俺に報告して」

「あ、はい」

私たちのやり取りに戸惑うような表情を浮かべた桐谷くんは、微妙そうに広沢くんの言葉に頷いてからデスクに戻っていった。


< 33 / 218 >

この作品をシェア

pagetop