復讐の華
急に来た私にも優しく接してくれて、美穂の人懐っこさはきっと母親譲りだ。
玄関先でお見舞いの品を渡し、来た道を戻る。
今日は倉庫に寄らずに、家に真っ直ぐ帰るつもりだった。
ようやく見覚えのある道に出た頃、再び雨が地面を濡らし始めた。
朝と同じように折り畳み傘で雨を凌ぎながら歩いた先の横断歩道の端に、見知った顔が視界に入る。
「伊織…?」
傘も差さずに不自然に地面を見つめて、ただ佇む彼。
信号が青に変わっても渡ろうとしない。ポケットに手を入れて、一人で何をしているんだろうか。
私も此処から動けなかった。雨に濡れた伊織を少し離れた場所から見つめる。