可愛らしさの欠片もない
「何か…甲斐から聞いてるんですか?」
「何も。人に興味があるだけです。…あなたに」
…。
「聡明な方だ」
「私?私は…違います。聡明なら、こんなに引きずったりしません。どこかでけりをつけてます。…つけてるつもりで、諦めきれてないんです、…悔しいから」
「だけどその思いは一切口に出していない」
「…こんな話、誰かにされたことなんてなかった…」
「そうでしょうね、自分から話さないから。信じられるのは自分だけだと、そう思ってるから。…近い人間に裏切られるのは辛いものです。それをいなす術もしらない歳では。ただ辛いだけだった。苦い思いをさせられた」
「…あ」
「こんなおじさんだからこそ、気兼ねなく楽で居られるってことあるんだよ?
行き場のない気持ち、私に委ねてみる気はないだろうか」
「あ、…でも…」
いい迷いだ。
「その迷い。もう八割がた、私を受け入れている。…浄化させてみせるよ?」
手は離さない。ずっと握ったままだ。
「…試してみてもいい。…私はあなたを充たしてあげられると思う。あなたの心をね」
握った手。少し動いた。
「…どうかな…寂しさを埋めるだけだって構わないと思うんだが」
「…話を、聞いてもらえますか?」
「…勿論」
すっと立ち上がった。立ち姿の綺麗な女性だ。ライトの加減で今はよく見えた。凛とした顔…彼女の中ではもうとうに解決している。甲斐とのことは…昔のことだと。
「では、行きましょうか」
「…はい。…あの、ぁ」
腕の中に収めた。
「…あとは私に任せてほしい」
「…はい」
色白の頬が染まっている。…はぁ。やっと。
やっと手に入れることが叶った。いつか、手に入れたいと思っていたんだ。こんな機会が来るとは…。
「先に言っておく。私には妻がいる。しかし、それだけのことだ。ずっと自由にしている。籍だけを残した干渉しない関係だ。
あなたのことは責任を持つ。何も心配要らない」
「驚きません、大丈夫です。自分のことは自分で責任を持ちますから。そうでないとこんな…」
はぁ、やはり、きちんと自立してる女性だ。
「それでもだ。私が全ての責任を持つから。…大丈夫だよ」
「…はい、あの……、一緒に居るときは指輪を外してもらえますか?」
「勿論だとも」


