可愛らしさの欠片もない
「失礼、甲斐駿脩をご存じですか?」
これで反応しない訳がない。
「え?甲斐?」
この驚き方。いい反応だな。さっきまでとまるで違う表情だ。
「甲斐駿脩」
「…あなたは?」
間違いないな。甲斐を知っているようだ。
「私は……いや、それ、必要かな?」
「え?…あ…」
手を握った。…大丈夫そうだな、嫌がってはいないようだ。
「…何を」
「甲斐と知り合いだろうと、思い出して声をかけました」
「…そうですか、でも、あの…」
軽く力を加えギュッと握った。
「今夜、一人なんです」
…どうしたものか、って顔かな?
「ずっと一人なんです」
「え?」
「…もう恋はできない。そう思っていました」
「あの、…困ります」
引こうとした手を離さなかった。そろそろ身の危険を感じたか。まあ、訳の解らないナンパだと思っているに違いない。
「あなただって一人だ。決めて一人でいようとしてる。でも、それもとうに虚しくなってる。止めるきっかけを欲しがっている」
「あ、私の何を…」
「知ってるかって?そんなことは、何も解らない。当てずっぽう。ただ、人を見る目、観察には長けていると思いますよ?」
「……あ、もしかして、甲斐の……上司?」
「さあ…」
「……狡い。ん、まあ、プライベートは関係ないですからね……」
少し心を開いてくれたのかな?
…しかし、さっきの狡い、は、狡いな…。
「そうですね」
「私は……無理ですよ…」
察したかな。
「なぜ?」
「なぜって…」
「勿体ないですよ、このままなんて。どうにもならないって解ってるのに。その考え方、止めるべきだ。どんなに期待しても無いものは無い。そういうものだ。それを充分知ってるはずだ」