可愛らしさの欠片もない

申し訳程度に据えてあるキャビネットからグラスを取り出して振り向いて見せた。冷蔵庫から麦茶のポットを取り出した。

「フ、有り難う」

なんだか、変。すごく変。夜中なのよ。ちょっと前までは一緒に居てご飯をしていた。それで送ってもらって。そう時間も空けず今、またこうして…。

「あ、連れて帰って頂き、有り難うございました。ご迷惑をおかけしました。あの、…どんな風に?」

テーブルの前に座り、麦茶を入れた。

「おんぶして帰って来た」

…おんぶ…ギャー、大変。ずっと家まで?

「本当?ですよね?」

やっぱり、それですよね。私、自分の足で歩いてたら記憶もあるだろうし。

「うん。気持ちよさそうに寝てたから、無理に起こすこともないかなと思ってね。それでおんぶした。起きたら起きたでそのままでもいいと思ったし」

…重かったでしょうに。何か変なこと言ってなかっただろうか。

「腰とか、大丈夫ですか?」

自分の腰を叩いて見せた。

「あー、ハハ。男だよ?女性一人くらい、なんでもないさ、どこまでも行けるよ。…あ、痛たたた」

「えー、嘘…大丈夫ですか?」

慌てて側に寄った。

「ハハ。大丈夫大丈夫。嘘に決まってるだろ?冗談だから。本当に大丈夫。あ、頂くよ」

手で制された。

「はぁ、…もう。でも、すみませんでした」

「あぁ、……はぁ、上手いね、麦茶。久しぶりに飲んだ」

一気に空いたから注ぎ入れた。

「あ、有り難う。男の人はね、おんぶしてるときにすれ違ったんだよ。だから、起きてたってことだよね?」

あ?え?
でも、私……、全然覚えがないんだけど。記憶がないだけ?…向こうだって私のことは全く知らないし。

「あの、でも、……」

…変ね。

「嘘」

「え?………え」

嘘って、何。どういう意味ですか?
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