可愛らしさの欠片もない
どこも悪くないのだから立ち上がった。
「有り難うごさいました、聞いて頂いて…」
…あ。何か、言ってほしい。……何も言ってくれなければこれで終わりだ。………あ、待って、私、だから、どうしたいってことを言ってないんだった。このままでは本当に、はいそうですかって、それで終わりだ。
途端にまたドキドキが始まった。反応のいい心臓だ。“あなた”は普段通りにしてくれてていいのよ…。ふぅ。
「あ、あの、まだ、まだあります。ありました。すみません。……私とおつき合いは、あ、それは無理だとしても、……なんていうか、お試しでつき合ってもらうことはできませんか?あ、やっぱりつき合ってくださいになりますね」
お試しだろうとなんだろうと、結局つき合ってくださいってことなのに。好きです、つき合ってください、と言った高校生の告白が不意に思い出された。この状況で、好きです、と言ってしまうことはとても軽いような気がした。
「いいですよ、私で良ければ」
………え?…今、なんて…。
「あの…本当でしょうか…今…」
怖いくらい見つめてしまった。
「はい、私で良ければですが、そうですね、お互いを知ることから始めましょうか」
あ、う、そ……本当?あ、早く返事をしなくちゃ。気が変わるかもしれない。
「あ、は、い。はい。よろしくお願いします」
一歩踏み出して深々と頭を下げた。…本当だろうか。まだ信じられない気がする。こんなに上手くいくものだろうか。あっ、体を起こされた。男性も立ち上がったのだ。高いとは思っていたけど…顔をちゃんと見ようと思ったら顎が少し上がる。あ、目が合ってしまった。……素敵。あ、 もう、安堵と同時に恋心の方が優先的に出て来てしまってる。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
フッと微笑んで頭を下げられた。え…なんとも…惹かれただの、好きだのと、そんな話をしている様子とはほど遠い気がした。でもこれでつき合うことは決まった…。決まったんだ。
気持ちはドキドキしながら遥かどこかに飛んでいった。