可愛らしさの欠片もない
…やった、…やった。おつき合いって。…はぁ、…力が抜けたちゃった…。
「…では早速ですが、どこかに移動しましょうか」
え?
「お時間大丈夫ですよね」
はい。
「取り敢えず、自己紹介などから。…ここでも出来ないことはないけど、あまりにも味気ない。いいですか?」
「…あ、はい。是非とも!」
声が大きくなった。力が入り過ぎた。…是非ともなんて…余計なことまで。勝手に喋った口を押さえた。
「あ、ハハ。いや、…失礼。楽しそうな人のようだ」
楽しそうな人…それが私の第一印象か…。褒め言葉ではないと思う。やはりちょっとこいつは違うぞって意味だ。確かに変でしょうが……これはこの状況にテンションが変になってるだけです…。
「あ、……すみません、なんだか……舞い上がってしまって…」
何してるか何言ってるのか、解らなくなりそうになっていた。だって、あまりにトントン拍子で…。誰か証人になってくれる人が居ないと信じられないくらい。……はぁ。
「いえいえ。静かなカフェにでも行きましょうか。若い子の少ないタイプの」
「はい。有り難うございます」
では、こっちに。と歩き始めて直ぐ止まった。…びっくりした…。止まったことにもだが、直ぐ後ろを歩いていたからぶつかりそうにもなった、私も慌てて止まった。
「あぁ、違った。失礼、こっちです」
反対方向に歩き出そうとした。
「あ、失礼、おっと」
正面からぶつかった。ぐらついた。背中に手が回され、安定すると離された。
「大丈夫?」
「は、はい、……大丈夫です」
はぁ、不意打ち過ぎる…。こんな立て続けに想像もしてなかったおまけ。ドキドキのオプション付きなんて…。
…もしかして…この人は…。
「恥ずかしいのですが、私は少々、方向音痴なところがあるんですよ。だから、いつも時間に余裕を持たせるようにしてるんですが、焦ってしまうこともあって、時々走ってます」
やっぱり。意外な印象だ。完璧そうに見えるのに。では、あのときもそうだったのかもしれない。そこは知らなかったことにしておこうかな。話せるときが来たら話してみるのもいいかも。…そんなときが来なかったら?いやいや、直ぐ駄目になるようなそんな想像、するものではない。不吉過ぎる。
「あぁ、ここだ。ここです、ここに入りましょうか」
「はい」
…フフ。目的のお店に来れたようだ。
趣のある建物…珈琲の香りがしていた。