可愛らしさの欠片もない

一つだけはっきり解ったことは、あの人との出会いは、単なるラッキーでは終わらせたくないと思い始めていることだ。…今までとは少し違う、その思い、私の中に芽生えてしまった。…単純に焦り?今、誰も居ないから?…会える保証もないのに。頭だけで何とか出来ると思ってるのが恐ろしい。何を根拠に?だ。…はぁ。………あ、あ?え?……嘘、嘘だ。駅について足早に車両から降りるとチラッと視界に入った。
嘘嘘。えー、乗ってたの?……嘘でしょ、言ってよね…。
勿論、同じ車両ではない。私より前の車両から降りてきた。今朝もスーツだ。ということは、ぼぼここら辺が勤務先ってことで間違いないということなんじゃないの?ですよね?

…あ、ちょっと前のあのブレーキ…。あれでふらついた人がこの人の乗ってる車両にも居て、私がされたことと同じように受け止めたとか、なかったのかな。いや、まるでもう自分の彼の如く抱く嫉妬?そういうのは偶然でも許し難いって。そもそも周りに女性は居たのかどうかも解らないのに。居たのなら…羨ましい限り。そこに私が居合わせていたら……あの人だと認識していたら…、私は手を広げて自ら飛び込む程にふらついて見せたかもしれない。この際わざとらしくてもなんでもいい。もう二度とないかもしれないと思ったらそのくらい……恥も外聞もなくしていたかもしれない。いや、元々人で一杯で、そんな……お花畑のようなことはできる訳もない。それこそ妄想の中でだけ成立する……。

腕を返し時計を見た。いつも通りの時刻…。時間、あるかな。ちょっとだけならなんとか…。間に合わなくなりそうだったら走ればなんとかなるだろう。
この後の動向が気になった。改札を抜けた後はどっちに行くのだろう。何か、何でもいい、知りたい。そのくらいは確認しても、まだストーカー扱いにはされないだろう。肩にかけたバッグの持ち手を握った。
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