イジメ返し―新たな復讐―
まともな話が通用する様な相手ではない。

わたしは要領の悪い母に心の中でため息をついた。

「そうだろう?分かりきったことを言わせるな。専業主婦で三食昼寝付きの生活をさせてもらっている分際で全く。愛奈、お前もお前だ。祖父母の結婚記念日を忘れるなんて情けない。誰の金でお前は学校へ通えている?食事をとれている?こうやって何不自由ない生活を送れている。言え。誰のおかげだ?」

あぁ、また始まった。わたしの心の中がずっしりと重たくなる。

「お父さんのおかげです。お父さんが毎日仕事をしてくれているからわたしは学校に通えるし、何不自由ない生活を送れています」

機械的に自分の口から吐き出したものは、父を満足させるためだけの空虚な言葉だった。

本心など1ミリもないわたしの言葉に父は気をよくしたようだ。

「そうだ。それを忘れるな。同じことを何度も言わせるんじゃない」

父はそう言うと大きく伸びをしてソファから立ち上がった。

「俺はこれから両親の結婚記念日を祝いに食事へ行ってくる。だから、夕飯はいらない。あぁ、そうだ。確か以前何かでもらったうどんがあったな。少し賞味期限が切れているけど、ちょうど二人分ある。お前たちはそれを食べなさい」

「……分かりました……」

母は表情一つ変えずに小さく頷いた。

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