イジメ返し―新たな復讐―
救急隊員がやってきたに違いない。

「は、はい!今行きます!!」

そう言ってエマちゃんを部屋に残して階段を駆け下りる。

この状況を救急隊員に聞かれたらなんて答えようか。

母を突き飛ばしてこうなったと言えば体裁が悪い。そうだ、母が転んだことにしよう。

転んで頭を切り、意識を失った。

「こっちです。こっちにいます!」

救急隊員を部屋に招き入れると、母が意識を取り戻して目を開けていた。

その傍らでエマちゃんが母の手を握っていた。

「どいて!!」

彼女を突き飛ばして母の手を握る。

「お母さん、大丈夫?突然転ぶからビックリしたよ!」

あたしの言葉に母は驚いたように目を見開いた後、瞼を閉じた。

母の目尻から一筋の涙が零れた。

よかった、と心の底からホッとする。母は今のあたしの言葉を理解してくれたはずだ。

母はどんなときだってあたしを守ってくれると言っていた。

「大丈夫ですか?僕の手を握れますか?」

救急隊の言葉に母が目を開ける。

「この部屋で転んだと娘さんに聞いています。今から病院へ向かいます。よろしいですね?」

救急隊員の言葉に母は「違います……」と消え入りそうなほど小さな声で言った。

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