きみと秘密を作る夜
そして、約束の、12月31日。
夜10時に家を出て、酒屋の角を曲がったところに、晴人はいた。
自転車にまたがり、気だるそうにスマホをいじっていた晴人は、私に気付き、ふっと笑った。
「親、何も言わなかったか?」
「普段のおこないがいいからね。信用されてんの、私」
笑いながら言って、晴人の自転車の後ろに乗る。
もう文句を言われたりはしない。
自転車は、ゆっくりと走り出した。
行き先は、あの、山の上の神社らしい。
凍てついた風が吹き、私は思わず身を縮めてしまう。
「こっちの冬ってほんとに寒いよねぇ」
「こんなんまだ余裕だよ。2月とかよく雪降るからな」
「ほんとにぃ? 私、寒いのダメなんだぁ」
「暑いのもやだとか言ってなかったか?」
「うん。どっちも嫌い」
「ワガママなやつめ」
仰ぎ見た空には、無数の星が輝いていた。
晴人と見る景色は、いつだってキラキラしている。
暑いのも、寒いのも嫌だけど、それでも今は、この町にきてよかったと思っている。