きみと秘密を作る夜
学校。

お見舞い。

家事。

勉強。


そこに不安も重なって、もしかしたら私は、自分が思っている以上に疲れ、弱気になっているのかもしれない。



「ほんとにごめんね。何でもないの」


慌てて言う私に、晴人は足を止めて振り向いた。



「何を謝ってんだよ。愚痴くらい、言いたいだけ言えばいいだろ。誰だよ、お前。普段はワガママなくせに、こういう時だけしおらしくなってんじゃねぇよ」


励ましなのか、それとも悪口なのか。

わからないけど、でも考えるより先に、思わず笑ってしまった自分がいた。


ひとしきり笑ったら、少しだけ気持ちが軽くなったような気がした。



「ありがとね、晴人。今日、ここで、晴人に会えてよかった」


私の言葉に、晴人は肩をすくめて見せるだけで、何も答えず、また背を向けて歩き出した。


あの日、海辺で出会ったのが、晴人でよかった。

私は心底そう思いながら、再びその背を追い掛けた。

< 41 / 272 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop