嫁入り前夜、カタブツ御曹司は溺甘に豹変する
 一夜明けて客観的に物事を考えてみると、また見えてくるものがある。

 仁くんが私を恋人として扱い、妻にしようと考えているのは疑うべくもない。もちろん簡単な気持ちではなく真剣に。

 でもそこに気持ちは伴っているのだろうか。

 無理やりにでも私を好きになろうと、必死になって昨日のようなスキンシップをはかってきたのだとしたら。

 なんとも言えない気分だ。

 寝入る前まで幸せ絶頂だったのに、考えすぎたせいで今では絶望感に襲われている。

「浮かない顔してどうしたの?」

 更衣室でコックコートに着替えていると、すでに着替え終わって髪をまとめている萌が首を傾げた。

「浮かない顔してる?」

「してるしてる」

「そっかぁ」

 萌は私の顔を穴が開きそうなほど眺めた後、両手をパンッと合わせて「よしっ! 今日はどっか寄って帰ろう!」と提案した。

 このままでは悪い方向ばかりに考えが及んでしまうし、せっかく誘ってもらったのだから乗らないという選択はない。

「和菓子以外の、甘いものが食べたいなぁ」

「いいね! そうと決まれば今日も一日頑張るぞ~」

 拳を天井に突き上げて「えいえいおーっ」と声を張り上げる萌を見ていたら、もうだいぶ気持ちが晴れやかになっていた。
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