嫁入り前夜、カタブツ御曹司は溺甘に豹変する
「あれ。今日はやけにあっさり認めるんだな」
杏太はまじまじと俺の顔を見る。俺も杏太の顔を真正面から見つめた。
俺と似ているようで似ていない。老若男女に好かれそうな、綺麗でありながら愛嬌のある顔立ち。紛れもなくあのふたりから産まれてきた人間だ。
俺はもう産みの両親の顔をおぼろげにしか覚えていない。
「逆に聞く。杏太は花帆が好きなのか?」
瞬きを数回繰り返し、杏太は首を曲げてストレッチをしながら答えた。
「好きだけど友達? 妹? みたいな感じだよ。仁は違うだろ?」
「俺はもう随分と前から花帆を妹として見ていない」
「随分と前って……ほんっと分かりにくいよなぁ」
杏太は首の後ろに手をあてながら苦笑した。
「早く捕まえないと逃げられるぞ。もちろん心身的な話じゃなくて、心理的な意味で」
「分かってる」
「そう? 仁って不器用だからなぁ」
不器用だなんて生まれて初めて言われたかもしれない。いつだって上手くやってきたつもりだ。
「可愛い弟だからって、俺の前は気を抜くこと多かったんじゃない? 俺しか知らない仁の顔ってけっこうあるはずだけど」
たしかに杏太のなにも考えていなさそうな雰囲気に呑まれて、いつも張りつめている気が緩んでいたのはたしかだ。
杏太についてなんでも理解しているつもりだったけれど。侮れないな。
「まいったな」
今度は俺が苦々しく笑った。
杏太はまじまじと俺の顔を見る。俺も杏太の顔を真正面から見つめた。
俺と似ているようで似ていない。老若男女に好かれそうな、綺麗でありながら愛嬌のある顔立ち。紛れもなくあのふたりから産まれてきた人間だ。
俺はもう産みの両親の顔をおぼろげにしか覚えていない。
「逆に聞く。杏太は花帆が好きなのか?」
瞬きを数回繰り返し、杏太は首を曲げてストレッチをしながら答えた。
「好きだけど友達? 妹? みたいな感じだよ。仁は違うだろ?」
「俺はもう随分と前から花帆を妹として見ていない」
「随分と前って……ほんっと分かりにくいよなぁ」
杏太は首の後ろに手をあてながら苦笑した。
「早く捕まえないと逃げられるぞ。もちろん心身的な話じゃなくて、心理的な意味で」
「分かってる」
「そう? 仁って不器用だからなぁ」
不器用だなんて生まれて初めて言われたかもしれない。いつだって上手くやってきたつもりだ。
「可愛い弟だからって、俺の前は気を抜くこと多かったんじゃない? 俺しか知らない仁の顔ってけっこうあるはずだけど」
たしかに杏太のなにも考えていなさそうな雰囲気に呑まれて、いつも張りつめている気が緩んでいたのはたしかだ。
杏太についてなんでも理解しているつもりだったけれど。侮れないな。
「まいったな」
今度は俺が苦々しく笑った。