一匹狼くん、 拾いました。弐
間違っているのに、多分俺は、もし母親が謝ったら、赦してと言ったら、すぐに赦してしまうのだろう。
俺は義母さんのことが好きだから。
仁はきっとそれが分かってるから、俺にもっと怒れって言ったんだ。
涙が頬を伝う。
「……っ。岳斗、俺、どうしたらいいのかなぁ」
嗚呼。
なんでこういう時に頭に浮かぶのが仁でも結賀でも楓でもなくて、岳斗なんだろう。
岳斗はもう、帰ってこないのに。
……楓は生きてた。笑って、生きてくれてた。でも岳斗は生きてなかった。そりゃそうだ。だってあの日、岳斗を屋上から突き落としたのは、俺なんだから。
事故だけど。故意じゃないけど、それでもあいつを突き落としたのは、俺なんだから。
「……はぁ」
なんで、どうして。
どうして楓は帰ってきたのに、岳斗は帰ってこないんだ。
……神様は意地悪だ。
俺は、岳斗も帰ってきて欲しかった。
「が、岳斗……っ」
「ミカ、どうした?」
仁が俺の肩に腕をやって、優しく声をかけてくる。
仁の真後ろには、結賀がいた。
「……仁、もう大丈夫なのか?」
「ん、へーきへーき」
仁の目は、赤くなっていた。
「俺の話はいいんだよ。なんで泣いてんだ、ミカ」
いいわけがないだろ。
なんで仁はいつも、俺のことを優先すんだよ。
「……」
俺のせいで、心の中がめちゃくちゃなんじゃないのか。
それなのに、俺のことを心配するのか。
「……何で楓は帰ってきたのに、岳斗は帰ってこないんだって?」
悟られたのに驚いて、目を見開いて仁の顔を見る。
「なんで」
「ミカが考えてることくらいわかる。片想い舐めんな」
口角を上げて、得意げに仁は言う。
「ミカは岳斗がいないと、寂しい?」
俺の顔を覗き込んで、仁は首を傾げる。
「……寂しくないって言ったら、嘘になる。岳斗は、生まれて初めて出来た友達だから。それに、いつも俺を、引っ張ってくれてた」