一匹狼くん、 拾いました。弐
岳斗のことや義父親のことを思い出したこともあって、本気で笑うことは出来なかった。
あの時のことは忘れられないトラウマとして、俺の中にしっかりと残っている。仁はそのことがわかっている上で、あんなに泣いたり、怒ったりしてくれたのだろう。結賀だってそうだ。それなのに俺は未だに義親達を心の底から嫌いになれていない。その事実に、どうしようもなく、俺は嫌気がさした。
「ミカ、笑えないなら笑わなくていいから」
仁が俺の顔を見て言う。
「ご……」
謝ったらダメだ。俺は慌てて口を片手で塞いだ。
「そう。それで合ってる。俺達の前では作り笑いはしなくていいし、本当に謝りたい時しか謝らなくていいから」
傷ができていない方の手で俺の頭を撫でて、仁は笑った。
「うん、ありがとう」
手を下ろして言う。仁の優しさがしみて、胸が暖かくなった。俺は仁のこういうところが、本当に好きだ。
「ミカ、言ってくれてありがとな」
仁の指に包帯を巻きながら、結賀は俺に笑いかけた。
「え」
「俺達と出会ったばかりの時は、ミカ何もかも話そうとしなかっただろ。だから俺は、お前が自分から話をしてくれる度に、嬉しくなるんだ。心の内を全部話せとは言わないけど、これからも何かあったら、話してくれると嬉しい」
目頭が熱くなって、涙が溢れ出してくる。
「うん、うん」
涙を拭いながら、俺は頷いた。