一匹狼くん、 拾いました。弐
何も言えなかった。
死のうとしないなんて言えない。
父親にも母親にも見捨てられて、誰も信じられなくて。
生きているのに絶望しかなくて。
……絶望したままが死ぬのが嫌だった。
自分がいる世界を、地獄だと認めたくなかった。
死んだらそれを認めるハメになる気がして、どうしても死ねなかった。
二度も屋上を自殺場所に選んだのには、理由がある。
本当は、誰かに死ぬのを止めて欲しかったんだ。
「諦めるな!」って、誰かが目の前にヒーローみたいに現れて、言う。そんな馬鹿げたことが起きて欲しいと思っていた。
……屋上は高いから、誰でもいいから、地面にいる人間が死のうとしてるのに気づいて、止めに来て。
それで、止めに来たそいつと親友になって、辛いことを忘れられるくらい楽しく過ごす。
そんな幻想を、夢見ていた。
実際、それは起きた。一回目は岳斗に止められて、二回目は仁に止められた。
でも、辛いことを忘れるくらい楽しく過ごすことは、出来なかった。
たぶんそんなこと、一生できない。
……俺は自分の世界が地獄だと認めるのは嫌だ。でも、本当に地獄だとしか思えないなら、このまま生きててもしょうがないんじゃないかって。
死んだ方が楽になるんじゃないかって、そう思ってしまう。
もう、自分の世界が地獄だと認めるのが嫌だから自殺したくないなんて思ってない。
生きるのに希望があるなんて、思えない。