一匹狼くん、 拾いました。弐

「常連って、どんな人?」

「色々だな。三十代くらいの奴もいれば、四五十代のおっさんおばさんもいる。みんな良い奴だよ。酒癖悪かったりするのも中にはいるけど、店員のこと詮索してくるような奴はいない。みんな、自分の話聞いて欲しくて来てるからな」

「……そっか」

「おう。六人で働いたら、すげぇ楽しそうだな」

 歯を出して笑いながら、楽しそうに葵は言う。

「……うん」

 俺はそれに、小さく笑って頷いた。


「じゃ、俺下で飯作るから、お前風呂入ってこいよ。案内すっから」

 回収した雑巾を水洗いしながら、葵は言う。

「……わかった」

 寝室の隅のドアを開けた先にある風呂場まで俺を案内すると、葵は首を傾げた。

「お前、何なら食える?」

「油っこくないのがいい。サラダとか、魚とか」


「りょーかい。じゃ、ゆっくり入ってこいよ」

 葵は右手をひらひらと振ると、もう片方の手で、ドアノブを掴んだ。

「まっ、待って!」

 慌てて俺は声を上げる。

「ん?」

「……ありがとう、葵」

 笑って俺は言った。

「おう」

 葵は目を見開いたあと、満足そうに口角を上げて笑って、ドアを閉めた。


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