一匹狼くん、 拾いました。弐
「仁、ミカにあれ見せれば?」
仁のココアを入れ直してテーブルの上におくと、結賀は首を傾げた。
「あれ?」
仁が俺の隣に腰を下ろして、眉間に皺を寄せる。どうやら、全然ピンときてないようだ。
「ほら、中一の時の写真」
「あー。……確かにミカなら見せていいかもな」
そういうと、仁はココアを一口飲んでから、ズボンのポケットからスマホを取りだした。
仁がスマホを十秒ほど操作してから、俺に手渡す。
スマホにはファミレスのテーブル席に座り込んでいるマッシュの黒髪の少年がいた。少年は口元をにかっと綻ばせて、アイスを食べている。少年の目が大きく開いていた。きっと、アイスがすごく美味しいんだろう。
「それ、右にスライドして」
仁に言われた通りスライドしてみると、今度は制服姿の違う少年が出てきた。……いや、同じなのか?髪型が坊主で、眼鏡をしているだけで。少年は制服のボタンを全部きっちり止めていて、ネクタイをしっかり結んでいて、黒縁の眼鏡をかけていた。……優等生っぽい雰囲気だ。
「……それ、誰だと思う?」
結賀がニヤニヤと笑って聞いてくる。
「えっ。……まさか、仁なのか?」
俺は仁の顔を覗き込んだ。
「ああ、そうだよ」
仁は顔をしかめて頷いた。
――耳を疑った。だって、別人だ。今の仁は青い髪を肩まで伸ばして、片目を前髪で隠してて。
制服だって確かきっちり着てなくて、ボタンを第二まで外してたし、ネクタイだってしてなかったハズだ。俺が不登校になる前の記憶だから制服の着こなし方は正確じゃないけれど、そのハズだ。