一匹狼くん、 拾いました。弐

 棚は三段になっていって、一段目と二段目にアルバムが挟まってて、三段目に絵の資料が置いてあるようだった。

 アルバムを一つ手に取り、ページをめくる。

「「「……えっ」」」

 俺と仁と結賀の口から戸惑いの声が漏れた。

 アルバムにあったのは家族写真なんかではなかった。

 そこにあったのは、何百人という子どもの写真だった。

 卒業アルバムにあるクラスごとのページみたいに、二ページごとに三十人ほどの子供の写真があって、それぞれの写真の下に名前が書かれている。

 そして、その写真の全てにバツ印が書かれていた。


「……なんだ、これ」

「……私は俊平様と同じ孤児院で育ちました。ある日旦那様が孤児院に来て、私に一眼レフのカメラを渡してくれて、それで孤児院にいるみんなの写真を撮るように言いました。当時の私は親に捨てられたこともあってふせぎこんでいて、ただ適当に日々を持て余していました。そんな時に持たされたカメラに、私はすぐに虜になりました。……そのカメラで撮った写真を通して、旦那が子供を選別していたのも知らずに」

 露麻がアルバムを見ながら言う。

「……じゃあなんだ。俺はその孤児院にいた何十人もの子供の中から、顔だけで選ばれたって言うのか?」

「……はい。旦那様は俊平様の顔を見た時、俊平様以外に、最高のモデルはいないと確信したそうです」

 頭をトンカチで殴られたようだった。

 葵から言われてことの経緯をなんとなくは理解していた。それでもちゃんとは理解出来ていなかったのか、写真を見てやっと親父の異常性を実感した。

 こんなのは正気の沙汰ではない、常軌を逸している。
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