森の奥のパティシエール
「今回のお客様、可愛い人だよね。どんな悩みなのか気になる」

グレーテルがそう言い、厨房にまで聞こえてくる母親の声に耳を傾けている。ヘンゼルは「可愛いとかはどうでもいいけど、放ってはおけない」と言いながら洗い物を始める。

十五分ほど経った頃、「ヘンゼル!グレーテル!パルフェを持って来て〜!!」と母親が呼ぶ。

「は〜い!!」

グレーテルがそう言い、冷蔵庫からパルフェを取り出した。パルフェとは、パフェの原型となったフランス発祥のスイーツで、「完璧」という意味がある。

「この人はね、イライラして彼氏に八つ当たりをしてしまって喧嘩してしまったらしいの。きちんと頭を冷やして話し合いたいんですって」

母親がそう言い、女性も頷く。

「いつも素直になれなくて……。だから!素直に謝りたいです……」

「可愛い!!ツンデレってやつだね!!」

グレーテルがはしゃぎ、ヘンゼルが「埃がたつ」とグレーテルを呆れた目で見つめた。女性は緊張した面持ちでパルフェをスプーンですくって口に入れる。
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