小説家の妻が溺愛している夫をネタにしてるのがバレまして…
「郁人くんは…ギルティ…」

「?」


有罪判決をくだす。

裁判官、目の前にいるこの男性は天使のように振る舞いながらも、私の反応を見て楽しんでいる意地悪な悪魔です!


「何がギルティ?」

「……私に意地悪するところ。」

「……何かしたっけ?」


首を傾げて郁人くんは今日の行いを振り返っている。
そんな彼に容赦なく私はひとつの提案を突きつけることにした。


「今度出すミステリー小説、重版になったら……郁人くんを一晩中、私の好きにさせて!」

「……いいよ」


郁人くんからいとも簡単に得た了承に拍子抜けした。


拒絶されなかったことにホッと胸を撫で下ろす。が、それだけで彼が終わるわけがなくて。


「その代わり条件提示していい?」

「……あ、そうなります…?」


郁人くんは口角を上げて何か企んでいる。


(………絶対によろしくないことだ…。)


ネタにするな? 今すぐ離婚させろ…?


「………」


嫌な予感が胸中に蔓延る(はびこる)。


「……身構えすぎじゃない?」

「うぅ…そんなことない…」


いや、そんなことある。だって怖いし。
意地悪な郁人くんのことだ。
何か痛いことかもしれない。
ギュッと拳を握り締めながら、郁人くんの言葉を待った。


「デートしよう」

「…………へ?」


予想の斜め上からの言葉に、つい間抜けな声が漏れる。


「え、デート?」

「うん。デート」


爽やかスマイルに柔らかな雰囲気は天使そのもので。

そんな天使な夫は私のそばまで歩いてきて、こう言う。


「僕に、詩乃ちゃんをたくさん甘やかせて?」


言葉の後、彼は私の手首を掴んで手の甲にキスを落とした。


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